コラム【松坂、涌井、筒香を育てた 鬼の秘伝書】
プロ野球のセは広島がリーグ3連覇。パは西武が優勝目前となっている。
この2チームには多くの共通点がある。広島の172本塁打はリーグ2位、西武のチーム打率・274は同トップ。他球団を圧倒する打撃力がウリの一方、投手力はかなり脆弱だ。広島のチーム防御率は4.15。さらに西武は4.28でリーグワースト。「野球は投手」とよく言うが、まさに常識を覆す両チームの優勝といえる。
投手力を補ったものとして見逃せないのは、広島86、西武127のリーグトップの盗塁数が挙げられる。特に西武は突出しており、他球団の脅威となった。両チームの高い得点力を生み出しているのはバットだけではない。得点力と機動力は密接な関わりがある。
アウトを1つ取られる犠打より、盗塁が成功すれば効果的だ。セットポジションの際、実はほとんどの投手が、一塁走者が見えているようで見えていない。牽制球は捕手からのサインで投げているケースが多い。これはプロにも言える。見えていないなら、一塁走者は走りやすい。西武の選手は投手の首の角度から、これが分かっているかのように大胆にスタートを切る。広島も相手投手のクセの分析には定評があると聞く。ミーティングで徹底しているかもしれない。
プロの試合を見ていてなぜもっと三盗をしないのか、と思う。セット時に二塁走者を見てから目を切り、投球モーションに入るまで1、2秒の間がある投手が多いのだ。三盗は難しいイメージがあるかもしれないが、これならプロでも走れる。投手が目を切った瞬間にスタートが切れれば、俊足選手なら楽勝。並の脚力でも成功する確率は高い。三塁に進んだ方が得点の確率が上がるのはプロも高校野球も一緒。開幕前に「足を使いたい」と宣言しながら、61盗塁(12球団中11位)にとどまっている巨人などは、もっと挑戦するべきである。
機動力は盗塁だけに限らない。高校野球では4カ所で打撃練習を行うことがある。これは勧められない。4カ所から打球が飛んでくれば危険なため、同時に走塁が行えない。2カ所がベストだ。試合のように走者をつけて打球を見ながら判断する練習になる。守備もつければ「走攻守」3種類が同時に行える。プロも試合前に走塁練習を入念に繰り返している。
プロでも高校野球でも「足」があるチームはなぜ強いのか。走られたくないバッテリーの配球が直球と外角中心になり、打者が絞りやすくなる。相乗効果で打力も上がるからである。
(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)
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プロ野球のセは広島がリーグ3連覇。パは西武が優勝目前となっている。
この2チームには多くの共通点がある。広島の172本塁打はリーグ2位、西武のチーム打率・274は同トップ。他球団を圧倒する打撃力がウリの一方、投手力はかなり脆弱だ。広島のチーム防御率は4.15。さらに西武は4.28でリーグワースト。「野球は投手」とよく言うが、まさに常識を覆す両チームの優勝といえる。
投手力を補ったものとして見逃せないのは、広島86、西武127のリーグトップの盗塁数が挙げられる。特に西武は突出しており、他球団の脅威となった。両チームの高い得点力を生み出しているのはバットだけではない。得点力と機動力は密接な関わりがある。
アウトを1つ取られる犠打より、盗塁が成功すれば効果的だ。セットポジションの際、実はほとんどの投手が、一塁走者が見えているようで見えていない。牽制球は捕手からのサインで投げているケースが多い。これはプロにも言える。見えていないなら、一塁走者は走りやすい。西武の選手は投手の首の角度から、これが分かっているかのように大胆にスタートを切る。広島も相手投手のクセの分析には定評があると聞く。ミーティングで徹底しているかもしれない。
プロの試合を見ていてなぜもっと三盗をしないのか、と思う。セット時に二塁走者を見てから目を切り、投球モーションに入るまで1、2秒の間がある投手が多いのだ。三盗は難しいイメージがあるかもしれないが、これならプロでも走れる。投手が目を切った瞬間にスタートが切れれば、俊足選手なら楽勝。並の脚力でも成功する確率は高い。三塁に進んだ方が得点の確率が上がるのはプロも高校野球も一緒。開幕前に「足を使いたい」と宣言しながら、61盗塁(12球団中11位)にとどまっている巨人などは、もっと挑戦するべきである。
機動力は盗塁だけに限らない。高校野球では4カ所で打撃練習を行うことがある。これは勧められない。4カ所から打球が飛んでくれば危険なため、同時に走塁が行えない。2カ所がベストだ。試合のように走者をつけて打球を見ながら判断する練習になる。守備もつければ「走攻守」3種類が同時に行える。プロも試合前に走塁練習を入念に繰り返している。
プロでも高校野球でも「足」があるチームはなぜ強いのか。走られたくないバッテリーの配球が直球と外角中心になり、打者が絞りやすくなる。相乗効果で打力も上がるからである。
(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)